2005年07月04日

「ドアプロジェクト大阪シンポジウム」に行ってきた

昨日、7月3日(日)に「ドアプロジェクト大阪シンポジウム」に行ってきた。


ドアプロジェクトというのは、六本木ヒルズの回転ドアに男の子が挟まれて死亡した事件の原因究明のために、失敗学を提唱されている畑村洋太郎・工学院大学教授が手弁当で開始されたプロジェクト。
多くの個人と企業が参加して本格的に検証が行われた。

私がドアプロジェクトのことを知ったのは、NHK教育テレビの土曜フォーラムで4月30日に放送されているのを見たから。

 NHK ドアに潜む危険 畑村洋太郎の実験記
 http://www.nhk.or.jp/etv21c/update/2005/0430.html

そのとき、責任追及よりも再発防止のために、原因究明を最優先にした調査をする姿勢に驚かされ、確かに合理的だと感心させられた。

今回聞いてきて、日本では責任を棚上げして、原因を追究するというのが異例なことだと改めて感じた。私自身気をつけないと、感情的に見てしまいがち。


安全を確立するには、安全文化をつくりあげることなんだとわかった。
どこが危険かをしること。自分の身は自分で守らなきゃってこと。

六本木ヒルズの回転ドアの開発経緯を見ると、開発者に悪気はなかったのがわかる。
本来持っていた回転ドアは軽くなくてはならない、という安全の原則が会社が破綻したことで、伝わらなかったのだ。
このようなケースは世の中よくあるパターンだ。情報システムなんて担当者が変わって困ったなど、よく聞く話だし。

一から安全について考えなければならない。というのはその通りなのだが、問題はそのコストは誰がどうやって負担するのだろう?
もちろん、事故が起これば過大なコストが発生するので、予防することにお金をかけるのは意味があるのだが、JR西日本の尼崎の事故でもそのへんが意識されていなかったのが一番問題じゃないかという気がする。

その場合の問題は目先の利益を優先する経営者や株主ではないのだろうか。
最近は、事故が多いので、目先の利益にこだわるのは、かえって不利益を生むという認識も生まれつつあるのかもしれない。

一方で、カカクコムみたいにサイバーノーガード戦法で成功したといばってる会社がいるのも現状。

 大手サイトの「4つのやりません宣言」 サイバーノーガード戦法を超えた必殺のサイバークロスカウンター!
 https://www.netsecurity.ne.jp/1_2937.html

だからこそ、統計的に危険がわかる仕組みが必要ということか。
資金を獲得できれば、きちんと検証してどこが危ないかを知ることもできる。



ドアプロジェクト大阪シンポジウムのメモ
--------------------------------------------
○第三者の立体的な知見が必要。
 責任追及
   ホントの原因を追究してるかのような錯覚を生む→次の事故を起こす
   原因究明をやったような気になるのが危ない

○手弁当でおこなったから、制約がなく自由に検証でき、当事者も参加してもらえた。

○事故の当事者である、森ビルや、回転ドアメーカーの三和タジマが参加したことで、どのようなことが起こったのか、原因がなにかがわかった。

○ドアのメーカーは全部孤立している。ノウハウが共有されていない。
 共通の知識を得るため→同じ基準で実験

○予察実験、精密定量化実験、ダミー人形実験の3段階を行った。
 予察実験
  何が起こるのか
  新聞紙ロールをはさんだり
 精密定量化実験
  発生する力の正確な大きさをセンサーで測定
 ダミー人形実験
  人間の体にかかるおおきさをダミー人形で測定

○実験の結果
 自動ドア:大型回転ドアだけが危険。
      エレベータドア、スライドドア、電車のドア(在来線、新幹線)、自動車のドアは
      挟まれても大きな怪我をするレベルになかった。
 手動ドア:小型手動回転ドア、手動スライドドア、車のドア、事務所の戸などは致死傷になる
      だけの挟み力が発生していた。

○六本木ヒルズの回転ドア
 ダミー人形の実験の結果、子どもの頭が挟まれ、肩が両側に押さえられるので、頭だけが挟まれたまま引っ張られる状態になることがわかった。

 安全性の知見が継承されていなかった。
 ヨーロッパでは回転ドアは軽くないといけないのがわかっていた。
 
 ●ヨーロッパのブーンイダムの製品を輸入。ブーンタジマが改造した。
  そのとき、見栄えをよくするために、アルミ張りからステンレス張りに変更
  900キログラム→1200キログラムに重量増える
 ●耐風圧強度の不足などの対策
  どんどん回転ドアが重くなっていく。
  駆動部:中心駆動→外周駆動に変更
  スウィングドア→スライドドアに変更
  挟まれ防止センサー、追突防止センサーとりつけ
  →センサーをつけて止めようという思想が大間違い!!
 ●ブーンタジマ経営破たん
  →設計図書などがブーンダムに引き上げられた
  技術者逸散
 ●三和タジマが、実物だけを頼りに設計・制作
  →このとき、安全性の知見が継承されず。致命的なレベルまで回転ドアが重くなった。
  アルミ骨材→スチール骨材
  アルミフレーム→スチールフレーム

○予想外だった普通の事務所の戸。
 ドアクローザーの調整をしていないと、風が強い時など怪我をする。
 さらに、戸の根元側(戸尻)の方は、ドアクローザーの調整が正常でも2000ニュートンを超える挟み力が発生する。指をとばすには十分。
 現実に指をつぶす事故はよくあるとのこと。
 
 結局、回転運動するものは危ない。どう危ないかがわかってないから事故になる。
 
○電車のドアとベビーカー
 ドアは1枚25キログラムしかない。大きな力は発生しない。
 電車のドアは、挟まると自動的に開く構造。
 挟まったままだと、センサーが感知して、列車の電源が入らない。
 
 ところが、ベビーカーの車輪が挟まったときに、センサーが検知できない事故があった。
 現在のセンサー技術では対応できないので、JR東日本はベビーカーメーカーに対応を依頼。
 車軸にアタッチメントをつければ解決。
 対応したメーカーもあったが、対応していないメーカーもあるので注意!
 もちろん、ベビーカーで閉まりかけのドアに突進しないこと。挟まったら引きずられて死んでしまう。
 
○ずさんな福田小の防火シャッター
 手抜きして取り付けられており、非常に危険な状態だった
 シャッターが、子どもは頭や首を挟まれると死ぬ。
 作ったメーカーは倒産している。


○総括・知見
 ありうること、考えられることは起こる
 
 よく起こることは対策される。
 めったに起こらない、起こったときは致命的なことには対策されない。
  スレッショルドが年々上がっていく
  だいたい30年で起こる。

 自動ドアが安全になってたのはそれだけ事故を起こしてきたから

 手動ドアは、事故が起こっても自分が悪いと思ってメーカーに文句言わない。
 設計者は問題があることを知っているが、文句がこないから根本的な対策がうたれない。

 誰かがやるはず、俺の範囲じゃないと思ってる隙間で事故
 
 JRの尼崎の事故は三河島事故に学んでいない。
 電車が脱線したら、他の列車を瞬時に止めないといけない。500人死亡していてもおかしくなかった。
 

○安全なドアの実現のために
 要求機能と制約条件をいちから検討する
 赤外線センサーはすごくまずい
  建築家が悪い。日本中の回転ドアはこのままだと、また事故が起こる
  センサーは透過式でないといけない。

○構築すべきシステム
 回転ドア、プールの排水溝、階段など危険なものはたくさんある
 ニュースだけで騒がれて、対策がとられない
 ●医者のところで集計が必要
 ●ドアの事故の2/3は自動車の事故
  日本ではまったく集計していない
  オーストラリアでは集計して対策した結果、事故が半減した
 ●発信する
  家庭、学校、仕事
 →収集から発信までの仕組みが必要
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参考リンク

畑村創造工学研究所
http://www.sozogaku.com/hatamura/

子どもの事故予防情報センター
(ドアプロジェクトに参加された山中龍宏・緑園こどもクリニック院長が代表の団体)
http://www.jikoyobou.info/
六本木ヒルズ回転ドアの事故から学ぶ

http://www.jikoyobou.info/hv/hv_data/news016.htm

Yahoo!ニュース 六本木ヒルズ回転扉死亡事故
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/local/revolving_door_accidental_death/

森ビル (六本木ヒルズの大家)
http://www.mori.co.jp/apology/index.html

三和タジマ株式会社 (回転ドアの製造会社)
http://www.tajima-st.co.jp/

三和シャッター (三和タジマの親会社)
http://www.sanwa-ss.co.jp/index.html

posted by 端っこなひと at 02:41| Comment(2) | TrackBack(0) | セミナー・勉強会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
幼稚園 保育園関係の仕事をしています。サッシ ドア等の危機対策をよくいわれますが安全対策された物がありません。そこで(戸閉り安全装置)を考案いたしました。特許公開広報 文献種別a
文献番号 h16−108140  戸 ドアが完全に閉まる手前の設定位置で止まりハンドルによりストッパーを解除して閉める。ストッパーを2個ハンドルで逆の動きをさせ時間差により 必ず1度止まる仕組み 機会があればご検討ください。
Posted by 菊池哲雄 at 2005年09月24日 15:00
はじめまして菊池さん。
情報をご紹介いただきありがとうございます。
私は技術的なことはわかりませんが、安全なドアに代わっていけばいいなと思います。

シンポジウムを聞いた限りでは、学校関係の問題は、付け替えるための予算措置が行われないという、政治レイヤーの問題だという印象をうけました。
Posted by 端っこなひと at 2005年09月25日 02:00
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